学生と音楽のまち 5区・ソルボンヌ地区

先日パリにあるサン・エフレム教会という小さな教会に音楽を聴きにいってきた。

 

パリは中央の中心から螺旋状に20区の行政区が定められている。

 

それぞれの行政区は以下の地図参照。

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パリの行政区(転載)

 

サン・エフレム教会はパリ5区の北西、ソルボンヌ地区に位置している。

いってみると、サン・エフレム教会だけではなく街全体が音楽にあふれた地域だった。

たくさんの楽器屋やレコードショップ、レストランの小窓にはチェロの置物が飾られていたりした。

サン・エフレム教会は小さな教会だが、演奏会のポスターはパリ中のいたるところに貼られていて、小規模ながらもまちの人々に支持され、積極的な音楽活動をしていることがうかがえた。

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サン・エフレム教会(筆者撮影)

 

なぜこんなに音楽が溢れているのか。理由は三点ある。

第一に、ここが学生のまちだということ。そもそも5区はパリの中では学生の街として知られているが、特にソルボンヌ地区は大学が多い。パリ第一大学をはじめとする数多くの大学のキャンパスが点在する。感受性の高い学生たちは、未知の音楽を積極的に吸収できる。

第二に、ここより南に行くと芸術のまちモンパルナス地区があるということ。単純に、近ければ集まりやすいということだろうか。

第三は、あくまで筆者の感想ではあるが、この地区の地形である。ここには曲がりくねった路地や緩やかな坂道がたくさんあった。狭い路地に好奇心を刺激されると同時に、なんとなく居心地が良い感じがして、ゆったりと音楽を楽しむにはちょうど良い場所のような気がした。

 

パリを散歩すると本当にたくさんの発見がある。これからも幾度か訪れては、今まで知らなかったパリの姿を発見したい。

 

 

ドラマチックな古代史エピソード 長屋王事件

『古代史講義 ー邪馬台国から平安時代まで』/佐藤信ちくま新書)を読んだ。

本書は3世紀の邪馬台国から12世紀の奥州藤原氏までの古代史研究を通観する内容で、最新の研究成果を読みやすく編纂したものである。

通読した中で、第6章の長屋王事件の記述は他と比べてもドラマチックな内容で興味を惹かれた。

古代史講義 (ちくま新書)

古代史講義 (ちくま新書)

 

 

長屋王事件とは

「七二九年(神亀六)二月十日の夜、平城宮朱雀門のほど近く、二条大路に接した広大な邸宅を突如六衛(りくえい)の兵たちが取り囲んだ。」の書き出しから始まる本事件は、光明皇后立后を目論む藤原四子が、次期天皇候補として最有力視されていた長屋王に冤罪の罪を着せて殺害したものである。

長屋王は密告により、謀反の罪を着せられ、二日間の詰問のうちに自害した。しかし実際には、上述したように藤原四子による権力掌握の一手であり、平安時代以降は冤罪として周知されている。

 

感想

筆者は韓国の歴史ドラマを見るのが好きで、「チャングムの誓い」などを手がけたイ・ビョンフン監督の作品はほとんど鑑賞してきた。ドラマで描かれる時代は様々だか、朝鮮の歴史は王による統治が日本と比べても非常に長い。戦国時代のように、わかりやすい騒乱で勝ち負けが決まるのではなく、政治的策略によって敵を失墜させのし上がっていくドラマがある。

 

長屋王事件は映像化すれば、政治的策略による冤罪事件としてかなり見応えのあるものになりそうだ。日本は時代劇があまり盛んではないという話を聞いたことがあるが、戦国や江戸時代だけでなく、もっと古い時代のエピソードを映像で見ることができれば、一層自国の理解にも深みが出るし、何より楽しいだろうな、と思う。

「世界一美しい」アントワープ中央駅

ベルギーではもっとも人口の多い都市、アントワープにいってきました。

アントワープ中央駅が「世界一美しい」と評判なので、実際にいって気になった点をいくつか。

 

ファサード

ターミナルと待合ホールは1905年にベルギー出身の建築家ルイ・デラサンデリによって建て替えられました。

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アントワープ中央駅ファサード(筆者撮影)

正面から見ると、ドームのサイズに対してホール部分の比重が大きく、かなり下半分が重く感じられます。ノートルダム大聖堂などと比べても、上昇力よりはむしろ前面の広場を囲うような横への広がりを感じました。

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アントワープの聖母大聖堂(ノートルダム大聖堂)(wikipediaより)

教会建築とは異なり、駅舎建築は、ギュスターブ・エッフェルの設計も同様に、下半身に広がりのある形をしています。

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1878年のシャン・ド・マルス=トゥール・エッフェル駅(wikipediaより)

増築部分

駅の中に入り、プラットフォームに向かうと、ホールとは異なる大空間が広がっています。

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プラットフォーム(筆者撮影)

私が注目したのは、1905年に完成したファサードを含むホールとの連結部分です。あえてなのか鉄骨の色を変えています。初期の建築はドームにはめるガラスの枠を緑色に塗っているのに対し、プラットフォームを構造する鉄骨は赤色です。 

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右が初期のガラス枠、左が増築されたプラットフォームの鉄鋼(筆者撮影)

どうしてわざわざ色を変えるか私にはよくわかりませんが、こういった建物は今までも何度か見てきたような気がします。今後、調べてみようと思います。

 

まとめ 

この駅舎の魅力は、初期に作られたホールであることはいうまでもありませんが、プラットフォームの大空間は壮観でした。

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地上1階から4層のプラットフォームを見渡す(筆者撮影)

駅に入ると多くの観光客がカメラを構えて立っていました。それだけ様々な魅力がまだまだある建築だと思います。

 

TRANSIT(トランジット)26号  美しきオランダ・ベルギー (講談社 Mook(J))
 
ベルギー・アントワープへの招待

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世界の美しい階段

世界の美しい階段

 

 

 

 

 

書評の書評⑴

日経新聞土曜版から興味を持った書評のまとめ。

 

書評 『現代中国外交』(毛里和子著、岩波書店)/ 川島 真

本書評は、アジア政治外交史を専門とする評者が、同業の著者の分析に対して、自身との相違点も踏まえつつ、簡潔に要点を整理したものである。

第一段落に、簡単な著者の紹介と本書の全体構成を大まかに説明する。

第二段落からは、著者の分析の特徴を3点にまとめ、本書の要約をする。段落の最初は「著者の分析の特徴は3点ある。第1に、〜」から始まり、読者が要点だけを抜き出して読むことができるようになっている。文章を書く際の定石がここでは使われている。また、ここでは著者の考えは含まれておらず、内容だけに徹していることも、読者が要点を知る際に混乱しないための工夫と言える。

第三段落、第四段落では、著者の理解を簡潔に述べ、自身との相違点を論じた上で、本書を価値ある分析だと述べている。

 

文章を書く上での基本的な体裁で、構成は非常に理解しやすい。中身自体は専門的で、一回読んだだけでは理解できないものの、必要な情報にすぐにたどり着ける書き方なので、実用性の高い書評だと思った。評者にとってもこの文章は索引として機能するように書かれたのでは。

 

現代中国外交

現代中国外交

 

 

 

知的生産の訓練

 

自己紹介

東大の大学院で建築を専攻しています。現在は交換留学でヨーロッパの大学に通いながら、同時に現地でインターンシップをしています。

建築を学ぼうと思ったのは、とにかく自分の家を自ら設計したかったからです。学部4年間を通じて学ぶ目的は次第に変わってきて、最近は建築関連の最新技術や空間分析に関心があります。

旅行が好きで、特定の都市に行く時には、前もって街の歴史や都市計画について調べるようにしています。

 

ブログの目的

このブログでは、「人に読んでもらえる文章」を効率良く書くことを目標とする。

 

主なテーマ(予定)

建築・都市・旅行・書評・大学院生活・時事

 

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上述の目的に関心のある読者・上述のテーマに興味のある読者