ドラマチックな古代史エピソード 長屋王事件

『古代史講義 ー邪馬台国から平安時代まで』/佐藤信ちくま新書)を読んだ。

本書は3世紀の邪馬台国から12世紀の奥州藤原氏までの古代史研究を通観する内容で、最新の研究成果を読みやすく編纂したものである。

通読した中で、第6章の長屋王事件の記述は他と比べてもドラマチックな内容で興味を惹かれた。

古代史講義 (ちくま新書)

古代史講義 (ちくま新書)

 

 

長屋王事件とは

「七二九年(神亀六)二月十日の夜、平城宮朱雀門のほど近く、二条大路に接した広大な邸宅を突如六衛(りくえい)の兵たちが取り囲んだ。」の書き出しから始まる本事件は、光明皇后立后を目論む藤原四子が、次期天皇候補として最有力視されていた長屋王に冤罪の罪を着せて殺害したものである。

長屋王は密告により、謀反の罪を着せられ、二日間の詰問のうちに自害した。しかし実際には、上述したように藤原四子による権力掌握の一手であり、平安時代以降は冤罪として周知されている。

 

感想

筆者は韓国の歴史ドラマを見るのが好きで、「チャングムの誓い」などを手がけたイ・ビョンフン監督の作品はほとんど鑑賞してきた。ドラマで描かれる時代は様々だか、朝鮮の歴史は王による統治が日本と比べても非常に長い。戦国時代のように、わかりやすい騒乱で勝ち負けが決まるのではなく、政治的策略によって敵を失墜させのし上がっていくドラマがある。

 

長屋王事件は映像化すれば、政治的策略による冤罪事件としてかなり見応えのあるものになりそうだ。日本は時代劇があまり盛んではないという話を聞いたことがあるが、戦国や江戸時代だけでなく、もっと古い時代のエピソードを映像で見ることができれば、一層自国の理解にも深みが出るし、何より楽しいだろうな、と思う。